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マモちゃんのブログ

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朝鮮半島の危機

朝鮮半島の危機は「誰のため?」

著者が直接聞いたという米国の高官の生発言あり。あえて確認していませんが、James R. Lilley(1928-2009)のようです。


朝鮮半島の危機は「誰のため?」
The Korean Crisis: Cui Bono?
F・ウィリアム・イングドール

By F. William Engdahl

(http://engdahl.oilgeopolitics.net/)

2010年5月31日


北朝鮮が3月に韓国の艦船を沈没させたという話で、南北朝鮮の緊張が一気にエスカレートした。この事件で、沖縄の米軍基地を閉鎖する日本政府の計画も逆転することになった。この奇怪な事件で疑問なのは、いったい誰の利益になるのか?である。


3月26日、1,200トンのコルベット艦「天安」が、魚雷で沈んだといわれている。紛争になっている黄海のNLL(北方限界線)付近で、突然の爆破により沈没し、46人の水夫が死亡した。5月26日、韓国軍と米国、カナダ、英国、スウェーデンの匿名の専門家からなる特別調査委員会が「天安は北朝鮮製の魚雷を外部から受け、水中爆発で沈没した。魚雷は明らかに北朝鮮の潜水艦が発射したものであることが証拠で示されている」と報告した。

この報告に、朝鮮半島と日本に一気に緊張が高まった。中国とロシアも、危機の沈静化に乗り出してきた。ペンタゴンにとっては非常に都合の良いタイミングで発生した。北朝鮮は、同国が魚雷を発射したことを激しく否定しており、対立を誘発する行為だとワシントンを非難している。この言いがかりに怒った北朝鮮は、韓国との連携を全面的に断ち、120万の軍隊を戦闘配備したという。

米国と韓国は、「この最近の事件発覚を受けた措置」として「近い将来」に潜水艦の妨害に備える合同軍事演習を行う予定であると、ペンタゴンの報道官は述べている。

オバマ政権は、北朝鮮は報いを受けることになると言い、韓国を「明確」に支援することを表明している。オバマは、軍の司令官に「確実な即応体制」と「将来の攻撃の阻止」のため、韓国と協力するよう命じた。

奇妙な証拠
匿名の委員会が引き合いに出した鍵となる証拠は、調査の最終段階でどうにかして回収した魚雷のプロペラの破片だった。ロシア科学アカデミーの東洋研究所韓国局長のアレキサンダー・ウォロンツォフによると、その破片には、「一番」と読める印があり、7年前に黄海で発見された北朝鮮の魚雷と一致するという。そして「正味重量250kgの爆薬を搭載した魚雷による爆破と言われているが、それを考えると、北朝鮮を思わせる印のついた断片を発見できたのは、極めて運が良かったに違いない。その印が、魚雷の国籍を示す唯一の痕跡であるが、これはもちろん、韓国の魚雷とそっくりのように見える」とも言っている。[1]

オバマのホワイトハウスは、急いで委員会の報告を承認した。ホワイトハウスは、妙に準備良く、報告書の発表直後に声明を出して「攻撃行為」を非難した。まだ報告書が出ない内にオバマは、韓国の李明博大統領に電話し、攻撃が誰の犯行か明確になるまでは北朝鮮との接触を完全に停止するように伝えたそうである。とても事態を沈静化する行動とは思えない。

問題の沖縄の米海軍基地の閉鎖を公約して選挙に勝った日本の政権は、朝鮮半島の危機を根拠に、突然ワシントンに降伏して論争を「決着」させることに同意した。そして現在、日米両国は、沖縄の米軍基地の再配置について合意に至ったところだ。日本の北澤俊美防衛大臣と米国のロバート・ゲイツ国防長官は、韓国の委員会が証拠を「発見」したのと同じ日にペンタゴンで会談している。現在のところ、ロシアと中国政府は、韓国の言い分に極めて慎重な対応をしている。ロシアのラブロフ外務大臣は、ロシア政府は、韓国および「その他の情報源」双方からの関連資料を慎重に検討するつもりだと述べている。韓国の事件解釈については保留し、更に検証が必要なことを明確に伝えたのである。また、オバマ政権とは全く正反対に、ラブロフは、双方の当事者に自制を呼びかけている。

中国も、概して同様の姿勢である。中国外務省の報道官は、天安の沈没は惨事であり、朝鮮半島と北東アジア全体の平和と安定を最優先に取り組むべきと述べている。北京は、事件の真相が判明するまで、冷静に自制するよう呼びかけている。非公式ながら中国は、韓国の証拠は、納得しがたく、つぎはぎで矛盾していると批判しており、独自に状況を調査するつもりだと言っている。

北朝鮮は、証拠は捏造であり、自前の調査団を送る準備ができていると述べている。平壌は、韓国の「証拠」を調べるために代表団を派遣すると申し出ている。これは、南北間の対話の破綻を回避し、対立を緩和するという意味では、タイムリーで合理的な申し出である。韓国が北朝鮮との協議を拒否することは、さらに韓国の証拠の信憑性を失わせることになる。

北朝鮮がないと困る
米国は、日本の沖縄の重要な米軍基地に論争を抱えているだけでなく、韓国の軍事機構を打ち切り、2012年に韓国に譲るよう圧力を受けている。朝鮮半島には28,000人の米軍が駐留している。1950年代の朝鮮戦争の終結後に合意した内容に従い、朝鮮半島で戦争になれば、韓国の兵士は米軍の司令で動くことになっている。最近の事件としては、北朝鮮の核開発計画に関する6カ国協議(ロシア、日本、中国、米国、韓国、北朝鮮)について、北朝鮮には協議再開の準備ができていたようだったが、国連がミサイル実験を非難したことに対抗して平壌が離脱したため、2009年4月に協議が中断になっている。

著者は、1999年に、ブッシュ家と親しい元北京駐在米国大使・CIAキャリア官僚と話したことがある。彼はふと気を許してこう言った。

「もし北朝鮮という国が存在しなければ、作らないといけないだろう。北朝鮮があるから冷戦が終わっても日本の領海に我々の艦隊を配備できる」

おそらく突然加熱した朝鮮半島の緊張は、この地域のペンタゴンの長期目標にも関係しているのだろう。「誰のため?」と問うなら、答は明らかに「ワシントン」である。

(翻訳:為清勝彦 Japanese translation by Katsuhiko Tamekiyo)

脚注
1 Alexander Vorontsov, The Conundrum of the South Korean Corvette, RIA Novosti, Moscow, May 26, 2010.

掲載2010年6月1日

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